ふくろう通信・・・7号

2001.5.7 配信




 前回の通信からまもなく二ヶ月になります。

 今回は温泉開発の話を書きます。とは申しても、きわめて限定された地域(北海道東部)に限られた話になりますが・・・・・。

 三月の末に弟子屈本町の北方の原野に新しい温泉を開発しましたJR釧路網走本線と国道391号線の立体交差地点の付近でカラ松林の中です。深度は1150mで摂氏52度の温泉が大量に湧出しました。

 既存の温泉源から直線距離で4キロ以上離れているので、正直なところ出るかどうか、少し心配でした。

 広い北海道は全国的にみても温泉の豊富なところですが、それでもどこにでも出ると言うわけではありません。よく「温泉の出る場所はどうして分かるのですか」と聞かれます。勿論やみくもに掘るわけではありませんが、北海道立地質研究所というところで、過去の道内のあらゆろデ−タ−を集積し公開しているので、事前に相談をします。しかしそれは概略であってどのような温泉が出るのか出ないのかは、当然のことながら、実際に工事をやってみなければ分かりません。

 ある程度安心して掘れるのは既存の温泉源の近くで掘る場合であり、今回のように4キロも離れたところで掘る場合はやはり危険です。今まで温泉のなかった所なので地元の新聞でも取り上げてくれました。

 1000mを越える温泉を掘削する業者は北海道で10社以内ですが、それだけマイナ−な世界だということです。仕事の量がきわめて限られているので大手は参入しないのです。

 ボ−リングの工法そのものは、石油掘削の工法の規模そのものを小さくしたようなものですから、その影響をうけ日進月歩です。石油の場合は一本の井戸を掘るのに数十から数百億を注入するので、ツ−ルの改良も文字どうり金に糸目をつけず行われるわけです。その恩恵を受けて我々田舎業者も1000m以上を楽々と掘れるようになりました。とは言っても1200m掘削するには昼夜兼行でも順調にいって三ヶ月は掛かります。

 30年くらい前には、200mくらいで地方の井戸堀り屋はギブアップして、それ以上は掘れませんでした。

 この30年間に開発された温泉はそれまでの1000年間に開発発見された温泉源の数倍になるでしょう。掘削の技術もありますが、温泉を汲み上げるポンプも画期的に進歩しました。いまでは水位が1000mも下がる深いところの温泉も汲み上げることができます。もっともそうなると、その経費よりは、水を加熱した方が安くなるでしょう。

 地表より地中に向かって100mごとに摂氏2度くらい温度上昇します。したがって1000mで20度プラス地表の平均温度を10度とすると30度になります。地下のマグマの影響を受けていれば、温度の上昇は100m当たり10度にもなるところがあります。最低の100m当たり2度でも、そこに地下水があれば30度の温泉が確保されることになりますが、問題はその地下水です。地下水が砂礫層(されきそう)のような中に層状に広く分布しているのを層状泉といいます。岩盤の中に亀裂が発達していて、その中に地下水があれば裂罅(れっか)状泉と呼ばれます。地上に降った雨水が地下1000mにも滞水されるには500年から1000年の時間が経過されているそうです。

 しかしいくら地下の温度が上昇しても地下水がなければ温泉になりません。

 地中の温泉水がその上部に岩盤や粘土盤で蓋をされたような状況になっているとボ−リングで穴を明けられた時、一気に噴出してきます。ちょうど風船に孔を明けたように。

 これが自噴泉で、最高の温泉源とされています。電気や動力のない江戸期の温泉は川床のように低い地盤の温泉か、岩の亀裂から湧出する温泉しか利用できなかった訳です。

 こんど開発した原野温泉は、幸いにも早速大阪の福祉施設の経営者が気に入ってくれて予約になりました。具体的内容は分かりませんが、福祉関係の施設を計画するようです。町の発展にも大きく寄与する計画を願っています。施設で働く労働力の確保の相談もありました。

 そうなると移住された人々の雇用の場も拡がり願ったりです。この事業の成功を切望しています。

辻谷 守